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米シェール輸入開始 LNG価格抑える取引力急務
編集委員 松尾博文

2017/3/9付
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 米国から、シェールガスでつくった液化天然ガス(LNG)の輸入が始まった。調達先の分散や取引条件の柔軟化など、LNG取引を変える起爆剤として期待を集めるが、悩ましい問題もある。いざ輸入を始めてみると価格が高かったのだ。

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 貿易統計によると、2017年1月の米国産LNGの輸入量は約21万トン。中部電力上越火力発電所(新潟県上越市)、東京電力ホールディングス(HD)富津火力発電所(千葉県富津市)、関西電力堺LNG基地(堺市)の3カ所にそれぞれ約7万トンが着いた。

 いずれも米シェニエール・エナジー社がルイジアナ州に持つLNG工場で生産された。エネルギー関係者が注目したのは、貿易統計で明らかになったこれらの価格だ。米国産は1月に日本に到着したLNGの平均より6~7割高かったのだ。

 日本が輸入する東南アジアやオーストラリア産LNGの価格は原油価格に連動する。これに対し、米国産LNGは米国のガス指標価格に応じて決まる。

 ここ数年の原油価格の低迷により東南アジアや豪州産のLNG価格は下がり、米国産の方が高いだろうとは見られてはいた。しかし、6~7割高という結果に「想像を上回る」(エネルギー関係者)との声があがった。

 日本が米国産LNGに目を向けたのはまず、その安さのはずだった。11年の福島第1原子力発電所の事故で全国の原発が止まり、火力発電で代替せざるをえなくなった。石油やLNGの輸入が急増し、日本は31年ぶりに貿易赤字に転落した。

 割安なシェールガスでつくるLNGを輸入すれば調達コストを下げられるはず――。電力・ガス会社や商社が米国でのLNG生産事業に競って投資した。政府も対日輸出を早期に認めるよう米政府に働きかけた。電気の値上げを申請した電力会社に、国の審査会合はシェールガス輸入による将来のコスト低減効果を織り込むよう求めた。

中部電力上越火力発電所に1月に到着した米国産LNGの輸送船
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中部電力上越火力発電所に1月に到着した米国産LNGの輸送船

 いざ輸入が始まると、コスト低減どころか、押し上げ要因になってしまったのは皮肉だ。この事態を招いた原因が原油の価格サイクルだとすれば、いずれ上昇に転じることもあるだろう。原油価格に縛られない価格決定方式や、自由に荷揚げ地を選べる米国産LNGの魅力は目前の価格だけでは否定されない。

 ただ、アジアのLNG市場は20年代前半まで供給過剰が続く見通しだ。「この価格ではアジアの需要家は当面、米国からの新規調達に二の足を踏む」(商社関係者)

 日本企業が出資する米国のLNG生産事業も、今年から来年にかけて相次いで立ち上がる。各社の引き取り量は年200万~400万トン。全量、日本に持ち込むのは大きなコスト増になる。

 アジア市場が吸収できないとすれば、別の販売先が必要だ。

 あるエネルギー大手が引き取る予定の米国産LNGの一部を欧州に持っていく計画を進めたところ、これを知った経済産業省が激怒し、幹部が社長との面会を拒絶したという。

 硬直的なことを言っている場合ではない。内外の企業と連携し、保有するLNGを柔軟に売買する。市場の流動化を促し、トレーディングの力を高める取り組みこそ急務だ。それが米国に築きつつあるLNG生産・調達の足場を生かす道になるはずだ。

[日経産業新聞2017年3月9日付]


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