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定時退社し「人・本・旅」 過重労働は管理者のせい
ライフネット生命保険会長 出口治明

2017/3/9付
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 政府が働き方改革に腰を据えて取り組み始めたことにより、メディアのみならず、生活者の会話でもこのテーマが取り上げられる機会が増えてきたように思います。ただ、その内容は断片的になっていることが多いようです。僕は誤った解釈が世間に広がってしまうのではないかと感じています。今回は働き方改革について考えてみたいと思います。

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、72年に日本生命保険入社。08年ライフネット生命保険開業。13年6月より現職。

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、72年に日本生命保険入社。08年ライフネット生命保険開業。13年6月より現職。

 そもそも、なぜ成果に応じて賃金を決める「脱時間給制度」へのシフトが、これほどまでに騒がれているのでしょうか。「賃金は働いた時間の長さではなく、成果に応じて決められるべきだ」という考え方は、極論すれば、古今東西、普遍的なものです。

 プロスポーツ選手の報酬は成果に応じて変動するのが一般的で、当たり前のこととして世間では受けとめられています。企業ではどうでしょうか。ホワイトカラーについても、例えばセールス(営業職)の給与は成果にスライドしています。期初に上司と面談して仕事の目標(成果)を相互に確認し、期末に目標(成果)達成度合いを相互に確認(評価)して給与を上下動させています。実はプロスポーツ選手と大差がないのです。

 この、脱時間給制度という大原則に抵触するのが「年功序列型賃金制度」です。これは「勤続年数に応じて労働者の能力や生産性が増し、ほぼそれに伴って成果も大きくなるはず」という考え方に立脚しています。

 僕はこの仮説を合理的に裏付けた論文や研究結果は寡聞にして知りません。事実がそうではないことは、プロスポーツ選手やセールスの例を見れば一目瞭然です。グローバルに見ても、同一労働(同一成果とほぼ同義)同一賃金が基準となっています。脱時間給制度という考え方は広く受け入れられているのです。

 働き方改革の目的には過重労働の解消があります。過重労働が生じる主な原因は次の2つではないかと筆者は考えます。

 ひとつは管理者の能力です。配下の労働者の意欲や能力を見極めることができずに、過大な目標(成果)を設定してしまう、あるいは、方針をコロコロ変えて途中で余計な仕事を付加してしまうといったケースです。

 もうひとつは配下の労働者が空気を読んでしまうことです。「この職場では、長時間労働(つきあい残業)をすると忠誠心が高いと評価される」と錯覚し、自然と居残ってしまうのです。

 つまり、過重労働の原因は管理者の資質と能力の低さだと言えるのではないでしょうか。

 管理者の基本的な役割は、労働者一人ひとりの意欲や能力を見極め、適度な目標(成果)を与えることです。適度な目標とは「時間内に終業させること」です。残業は管理者が業務遂行上どうしても必要な場合に個別に命令しない限りやってはいけないというのがグローバル基準です。

 僕は1948年生まれで、いわゆる団塊世代に属しています。同じ年に生まれた人は約270万人いました。現在、この世代が労働市場から退場しつつあります。一方、今年の新成人は約130万人しかいません。これは、わが国が大変な労働力不足に直面していることを意味しています。

 内閣府は、わが国の労働力人口が2030年までに現在より約900万人も減少すると推測しています。しかも、労働生産性は主要先進7カ国の中では最低です。

 労働力の減少を埋め合わせられるのは生産性の向上しかありません。疲労困憊(こんぱい)で帰宅して「飯・風呂・寝る」しか言わないような働き方から脱却し、定時に帰宅し「人・本・旅」で勉強する働き方に切り替えましょう。人に会い、本を読み、色々な場所に足を運ぶ――。多様なインプットを増やすことが画期的なアイデアの源になるはずです。

[日経産業新聞2017年3月9日付]

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