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米政権のWTO軽視は貿易戦争に道開く

2017/3/3 2:30
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 公正なルールに基づく国際経済秩序が損なわれることにならないか。米トランプ政権が1日公表した通商政策報告書を読むと、そんな危惧を抱かざるをえない。

 米通商代表部(USTR)による報告書は、世界貿易機関(WTO)が海外の不公正な貿易措置に甘く、米国が不利益をこうむってきたと指摘。不公正な措置には米国の国内法に基づく対抗措置を取るとし、米国の利益を損なうようなWTOの決定には従わない姿勢を明らかにした。

 1995年に発足したWTOの紛争解決メカニズムは、拡大する世界の貿易取引を円滑に進める安定剤として機能してきた。特にWTOの手続きを経ない一方的な制裁措置の発動を禁じたことで、むやみな制裁合戦を防いできた。

 最大の経済国である米国がこの手続きを無視して、高関税などの対抗措置を取るようになれば、世界の貿易秩序は乱れ、報復措置が相次ぐ貿易戦争につながりかねない。そうなれば世界だけでなく米国経済にも大きな害をもたらす。

 米国がWTOの判断に不満を示し、最終的な是正勧告に従わなかった例はある。だが、これまでは貿易秩序の守護神であるWTO体制を擁護する立場を貫いてきた。方針転換を示唆するような今回の報告書は憂慮に堪えない。

 米政権とWTOとの全面衝突につながりかねないテーマもすでにある。一例は、法人税改革の一環として下院共和党と政権が検討中の国境調整措置だ。輸出を免税にし、輸入費用を課税所得から控除できないようにするもので、実現すればWTO協定違反と判断される可能性がある。

 また、新政権が中国に対し、「為替操作」を理由に報復措置を取る可能性が取り沙汰されているが、実施されればWTO協定違反となるのはほぼ間違いない。今回示した方針通りなら、こうしたWTOの判断を米国は無視しかねない。

 もちろん、WTOが不公正な貿易措置の是正に十分貢献していないとの米国の主張には一理ある。中国などによる知的財産権の侵害や、様々な形を取った輸出補助が放置されている面は否めない。

 この問題は、WTOでの粘り強い議論や説得を通じて是正すべきものだ。自国の利益を損なうルールは従わなくてよいとの姿勢を米国が見せれば、世界に悪い前例を残す。悪影響は経済だけでなく、安全保障秩序にも及びかねない。

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