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豊洲、想定外の高濃度汚染 地下水の移動が原因か
日経エコロジー編集部 半沢智

2017/2/16付
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 「なぜだろう。私たち専門家も戸惑っている」。これは、1月14日に開催された「豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議」での、平田健正座長の発言だ。

東京都が開催した専門家会議の様子
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東京都が開催した専門家会議の様子

 会議で示されたのは、豊洲市場敷地内の地下水モニタリング調査の9回目の結果である。調査地点201カ所のうちの72カ所という広い範囲で環境基準値を超えるベンゼンやヒ素、シアンが検出された。ベンゼンは基準値の最大79倍と、これまでの結果と比べて濃度が急上昇した。

 通常、土壌汚染対策を実施した土地では、汚染物質の濃度は小幅に上下しながら次第に落ち着いていく。前回の8回目の調査では、3カ所で基準値をわずかに超えるベンゼンとヒ素が検出されたが、これは想定の範囲内といえた。しかし今回の結果は専門家の想定を大きく超えていた。都は、1月30日に地下水の再調査を開始。調査結果を3月中に公表するという。

 なぜ、広範囲かつ高濃度の汚染が検出されたのか。2つの可能性が考えられる。1つは、地下水の採取・保管・分析工程において人為的な作業が影響した可能性である。もう1つは、地下に土壌汚染が残っており、地下水を排水する「地下水管理システム」が稼働したことで汚染が出てきた可能性だ。

 都の調査では、1~3回目、4~8回目、9回目で採水と分析の調査会社を変えている。調査会社や作業員によって測定値が変わる可能性はあるのだろうか。

 それぞれの作業方法や手順は、環境省が「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン」を定めており、人為的な誤差は生じないようにしている。環境大臣または都道府県知事が指定した「指定調査機関」が、環境省が実施する国家試験に合格した技術管理者の下で作業する。

 とはいえ、作業員がどこまで厳密に調査するかは委託先に任されている。ある指定調査機関の社長は「水を採水器で採取するのかポンプを使うのか、水を容器に入れる際に空気の隙間がなく密閉しているか、分析装置の校正をどこまで厳密にするかなど、作業員によって測定値が変わる可能性はある」と話す。

 それでも基準値79倍という値が人為的な誤差によって出たとは考えにくい。横浜国立大学の浦野紘平・名誉教授は「人為的な誤差は出てもせいぜい数倍。環境基準値79倍もの汚染が誤差として出ることはない」と話す。

 もう1つの可能性である「地下水管理システム」の影響はどうか。

 地下水管理システムは、地下の水位を一定に保つために設置された。地下水が上昇したときにポンプで水を抜く「揚水井戸」や、抜いた水を浄化して排出する「浄化施設」などを備える。システムが24時間稼働を始めたのは昨年10月14日で、9回目の採水は11月24日と30日に実施された。

 観測用の井戸は筒状で、スクリーン(網)を通して土壌中の水が染み込んでくる構造だ。地下水管理システムが水をくみ上げると、地中の水が井戸に向かって移動する。水に溶けた状態で残っていた汚染物質が井戸に吸い寄せられ、あちこちの井戸で検出された可能性が高い。基準値79倍のベンゼンは、土壌汚染対策で取り切れていなかった汚染とみられる。

 地下水管理システムを稼働し続ければ、土壌中に残る汚染は浄化されていく方向に向かう。ただし、どの程度の汚染があり、完全に浄化されるのがいつになるかは不透明である。

 今回明らかになったのは、取り切れなかった汚染が残っている可能性が高く、地下水管理システムによってそれが徐々に浄化されていくということである。こうした事実を市場関係者や消費者がどう受け入れるかが、移転を判断する際の1つの焦点となるだろう。

[日経産業新聞2017年2月16日付]


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