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日米は新経済対話を冷静に進めよ

2017/2/12 2:30
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 トランプ政権になって初の日米首脳会談が開かれ、互いの経済関係を深めるための新たな対話を始めることで合意した。米側は通商分野でいきなり過大な要求をしてこなかったが、これで一件落着したわけではない。首脳同士の信頼関係を上手にいかし、冷静に協議を進めてほしい。

 安倍晋三首相は今回の訪米ではトランプ大統領との個人的な信頼の構築を最重視した。トランプ政権は歴代政権と比べて人事が遅れており、下からの実務的な積み上げによって日本の考えを伝えるのは難しいとみたからだ。

個人的信頼はできた

 特定の7カ国からの入国をいきなり差し止めようとしたトランプ政権の強引な手法は、海外からも米国内でも厳しい批判にさらされている。そうした中で日本がためらいなく歩み寄ったことには、賛否両論あろう。ここはしばらく様子見をしておいた方がよい、というのも一案である。

 ただ、日本が安全保障を米軍に大きく依存している状況を勘案すれば、ときの米政権と距離を置くという選択肢は現実には難しい。ゴルフ用語を用いて「刻むという言葉は私の辞書にはない」と述べた安倍首相の言葉遣いはともかく、個人的な信頼関係の構築を目指したのは妥当な判断である。

 重要なのは、せっかく築いた信頼関係をどういかすかだ。麻生太郎副総理・財務相とペンス副大統領をトップとする経済協議の枠組みをつくったが、そこで日本が一方的に押し込まれることになれば、何のためのゴルフ外交だったのかという話になる。

 会談後に発表した共同声明は、米国の環太平洋経済連携協定(TPP)離脱を踏まえ「日米間で2国間の枠組みに関して議論する」と明記した。これが日米2国間の自由貿易協定(FTA)を指すのか現時点では判然としない。

 米国を含む12カ国によるTPPは新たな世界標準となる貿易・投資ルールを定めている。日本はその重要性を米国になお粘り強く説明していく必要がある。

 同時に、アジア太平洋地域全体の自由貿易圏をつくる構想の一里塚になるのであれば、日米FTAの可能性を最初から拒む必要はない。両国は日米とアジア太平洋地域の貿易・投資を拡大していくためのあらゆる方策を率直に議論してほしい。

 トランプ氏はこれまで日本の対米貿易黒字をやり玉にあげ、日本市場は閉鎖的だと主張してきた。最初の首脳会談とあってか露骨な日本批判を控えたが、先行きに過度な楽観は禁物だろう。

 記者会見では米ゼネラル・モーターズ(GM)や米フォード・モーターなどの名をあげ、製造業の雇用増加を重視する立場を改めて示した。

 米政権は日本の自動車メーカーにも、米国での雇用増加や生産拡大を迫る公算が大きい。米国向け輸出の制限といった要求すら出てくる可能性がある。

 日本は不合理な要求には毅然と反論しなければならない。その一方でインフラやエネルギーなどの分野での協力を広げ、個別分野の対立が日米経済全体の悪化につながらないようにする工夫や柔軟な発想を求められる。

 日本企業も、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉の行方を含めてトランプ政権の政策に警戒を怠ってはならない。

通貨安批判に反論を

 気になるのは、トランプ氏の為替相場への認識だ。中国経済に触れる中で「為替の切り下げには苦情を言ってきた。公平な土俵でなければならない」と発言した。

 日本にも「通貨安誘導」といった批判の矛先を再び向けるおそれはある。日本は最近の約5年間、円売り介入をしていない。日米協議の場などで日本の立場を丁寧に主張し続けるべきだ。

 安全保障の面では、尖閣諸島が日米安保条約の適用対象であることを共同声明に明記した。トランプ政権がアジア太平洋地域への関与に消極的とみられている中での再確認には大きな意味がある。海洋進出を狙う中国へのけん制材料となるだろう。

 安倍首相は日本が安保面での役割を拡大させていくことに意欲を示した。強固な日米同盟の構築に向け、具体的に何をするのかをわかりやすく説明すべきだ。

 避けなければならないのは、通商と安保を取引することだ。両国民に疑念を抱かれるような不透明な取引は結局、うまくいかないものだ。取引好きなトランプ氏とゴルフ場で何を話したのか。安倍首相は隠さず明らかにすべきだ。

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