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M&Aリスクの丁寧な説明を

2017/2/10 2:30
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 上場企業の決算で、過去に実施したM&A(合併・買収)関連の損失を計上する例が増えてきた。環境の急変で買収した企業や事業の価値が下がったことに伴う会計処理だ。企業はM&Aに関する損失発生のリスクを丁寧に説明していく必要がある。

 特に目立つのは、買収額と対象企業の純資産の差である「のれん」や、買収先の「営業権」といった見えない資産から発生する損失の処理だ。企業は買収した事業が見込みほど収益を生まないと判断した場合、のれんや営業権の評価を切り下げ、その分を損失に計上しなければならない。こうした会計処理を減損という。

 東芝は買収した米原子力発電事業の経費が予想外に増えたため、のれんの減損などにより7000億円規模の損失が見込まれる。ソニーはDVDソフトの販売苦戦で、米映画会社の営業権について2016年10―12月期決算に1121億円の減損損失を計上した。

 減損会計の前提となるのは、事業が将来にわたってどの程度の収益を生むかという見積もりだ。企業は景気や世界情勢などさまざまな要因を考慮して見積もりを修正し、環境の変化に応じて減損の必要があるかどうかを判断しなければならない。

 有価証券報告書を丹念に読めば、減損についての経営判断を知ることができる。ある程度は損失発生のリスクを察知し備えることも可能だ。とはいえ、時間の制約があり経験に乏しい個人投資家の目に、減損の発表は唐突に映ることが多い。損失が巨額な場合は、企業や株式市場に不信感を抱くきっかけになりかねない。

 M&Aの増加に伴い、今や上場企業が抱えるのれんは総額で20兆円を超える。企業は決算内容を平易に図解した説明資料などを活用し、減損の可能性について踏み込んだ説明を試みるべきだ。

 監査法人の責務も重い。のれんなどの会計処理が妥当なものかどうか。専門家の立場から、より厳しく目を光らせてほしい。

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