Smart Times (日経産業新聞)

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

「成功にあぐらかかず」iPhone10年の教訓
ITジャーナリスト/コンサルタント 林信行

2017/2/9付
共有
保存
印刷
その他

 世界を変えた米アップルの初代「iPhone(アイフォーン)」の発表から今年で10年になった。アンドロイドも含めたスマートフォン(スマホ)全体の出荷量は15億台弱。アイフォーンだけでも年間2.2億台だ。スマホのカメラでメモを撮影したり、地図で道案内したりする風習は、今では世界で数億人が共有している。

 そんなアイフォーンのもっとも新しい使い方の1つが、改札にかざして電車に乗ったり、お店や自動販売機の支払いに使えたりする「アップルペイ」だ。

最新の技術が生活や文化に与える影響を25年にわたり取材。マイクロソフトやグーグルのサイトで連載を執筆した他、海外メディアに日本の技術文化を紹介している。東京都出身。
画像の拡大

最新の技術が生活や文化に与える影響を25年にわたり取材。マイクロソフトやグーグルのサイトで連載を執筆した他、海外メディアに日本の技術文化を紹介している。東京都出身。

 これを待っていたかのように、リクルートホールディングスのグループ会社はアップルペイに対応した決済端末を1万9800円で4月に提供し始める。クレジットカードの決済もできるうえ、消費者はアップルペイの機能を備えたアイフォーンさえあれば、現金やクレジットカードを持ち歩く必要はなくなる。今後は青空市場や屋台のような場所でもモバイル決済が増えそうだ。

 このモバイル決済、「もともとは日本製の高機能携帯電話でもできていたことではないか」という人も多いだろう。その通りだ。それどころか、携帯電話用のアプリケーションや各種情報サービスもアイフォーンが登場するよりも前に、「iモード」に代表されるかつての日本の携帯電話の上で誕生して大きな市場を生み出していた。

 一体、日本の携帯電話のどこがまずかったのか。見方はいろいろだろうが、筆者はその敗因は日本の伝統産業にも通じるものがあると思う。

 老舗企業の間ではよく「伝統は革新の連続」という言葉が使われる。大成功をした定番製品であっても、時代が変われば生活環境も人々の好みも変わる。和菓子の見た目や味も時代の流れの中で変化し続けてきた。

 日進月歩のテクノロジー製品なら、なおさら変化は必須だ。しかし、製品を花火のように打ち上げてそのままという事例は業種や業界を問わず、相変わらず多い。

 iモードに関して言えば、確かに携帯電話の性能や画面のサイズの進化に合わせて多少の規格の進化はしていた。だが、2007年のアイフォーン発表により、同程度の製造コストでパソコン並みの表現力や操作性を持った携帯電話がつくれる現実をつきつけられた。

 まだその時点ではiモードの方が大きな市場を築いていた。しかし、画面をタッチして簡単に操作ができるアイフォーンと、文字情報が中心で数字ボタンでメニューを選んで操作をするiモード系の操作画面との間には、大きな差があった。

 モノの進化には連続的な進化と、超越的進化がある。アイフォーンのスマホ用基本ソフト「iOS」が最新版に更新されている頻度をみると、他のスマホ用基本ソフトをはるかに上回る。アップルは他のIT系企業と比べても連続・超越型どちらの進化にも消費者を巻き込むのがうまい。

 他の企業では、成功している製品ほど、大事な顧客を逃したくない、嫌われたくないという思いが強く、大胆な超越的進化に踏み切れない。結果的に一世を風靡した製品を時代遅れとして風化させてしまうケースが少なくない。

 アップルの本社には、携帯型音楽プレーヤーの初代iPod(アイポッド)が発表された講堂がある。その部屋の外には創業者の故スティーブ・ジョブズ氏の次の言葉が今でも飾られている。

 「もし何かをやってうまくいったら、その成功の上で長い間あぐらをかき続けず、他の素晴らしいことに取り組み始めるべきだ」

 継続する力も大事だ。だが、それと同じくらい世の中の環境変化や新しい潮流にも目を向け、その中で継続と変化のバランスをうまくとっていくことこそが大事なのかもしれない。

[日経産業新聞2017年2月9日付]

「日経産業新聞」「日経MJ」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。電子版の有料会員の方は、日経産業新聞は月額1500円、日経MJは同1000円の追加料金でお読み頂けます。


人気記事をまとめてチェック

「テクノロジー」の週刊メールマガジン無料配信中
「テクノロジー」のツイッターアカウントを開設しました。

Smart Times (日経産業新聞)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

【PR】

Smart Times (日経産業新聞) 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

新人は洞察力と行動力、コミュ力を磨こう

 4月になり、新しい年度になりました。入社式が行われ、今年も若者が社会人としての一歩を踏み出しました。今回は新入社員の方々に向けて、これからの働き方について私が思っていることを書こうと思います。
 テク…続き (4/18)

「無精さと魔法」がITによる業務革新を生む

 たまに電子メールに添付された奇妙な返信用参加票を受け取る。氏名や所属などの見出しの後にカッコが書いてあり、その間に十数個のスペース(空白)がタイプされている。
 あれはどう返信するものなのか。空白を削…続き (4/11)

ハッカソンに取り組む会社も増えている(三菱東京UFJ銀行が開催したハッカソン)

日本企業のオープンイノベーションに3つの意義

 最近、日本の大企業の方々とミーティングすると、このようなことがよく話題になる。
 「何かイノベーションを起こしたい」「スタートアップ(ベンチャー企業)ともっと関わりを持ちたい」「上層部からオープンイノ…続き (4/4)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

日経産業新聞 ピックアップ2017年4月25日付

2017年4月25日付

・ICタグ、高温下でも利用OKに 京セラ、アンテナ一体の保護部品
・富士フイルム、医療用画像システム事業強化、カテーテル治療容易に
・すべてのモノにAIを ルネサス、IoT機器への搭載技術
・バイオマスを「地産地消」、洸陽電機が循環型モデル提案
・米アディエント、炭素繊維使い自動車シート4割軽く…続き

日経産業新聞 購読のお申し込み
日経産業新聞 mobile

[PR]

関連媒体サイト