Eの新話(日経産業新聞)

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

米温暖化対策が後退 観測データにトランプ氏の影
編集委員 安藤淳

2017/2/2付
共有
保存
印刷
その他

 米国で地球温暖化に懐疑的なトランプ大統領が就任し、オバマ前大統領が進めてきた多くの政策が後退するのは確実だ。米政府が長年、収集・蓄積してきた観測データ、解析結果が利用しづらくなる懸念もある。パリ協定など国際間の取り決めにもじわじわと悪影響を及ぼしそうだ。

画像の拡大

 ホワイトハウスのホームページから「クライメート(気候)」の言葉がほとんど消えた。オバマ政権時代の情報は記録コーナーに残ってはいるがたどり着きにくい。米紙ワシントン・ポストによると、米環境保護局(EPA)は気候変動関連情報をすべて削除するよう指示を受けたという。

 日本のある気候研究者は「1月の一時期、米海洋大気局(NOAA)のデータベースにアクセスできなくなり警告表示が現れた」と話す。NOAAやEPAは米国だけでなく世界のデータが見られる貴重な情報源なだけに、不安が漂う。

 過去の気象データは温暖化を科学的に裏付けるだけでなく、将来の変化を予測するうえでも欠かせない。このため、ペンシルベニア大学の研究者らが「データ・レスキュー(救済)」運動を始めた。国内外の専門家らと協力し、データのダウンロードや画像の写真撮影をして、安全な場所に保存する。

 トランプ大統領は2020年以降の温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱も検討中とされる。オバマ氏は議会の承認を得ずに大統領令でパリ協定に批准した。これを逆手にとりトランプ大統領は大統領令で批准を取り消すか、上院に批准を諮り否決に持ち込む可能性がある。

 ただ、条約事務局には批准国として登録済みなので抹消にはパリ協定で定めた手続きを踏む必要がある。それには発効から最低でも4年かかる。

 米国がパリ協定下で示した温暖化ガス削減目標を無視しても、罰則はない。オバマ政権が末期に、行政権限で駆け込み的に決めた国内対策は比較的容易にやめられる。

 ただ、トランプ政権が撤廃するとしている、石炭火力発電所からの温暖化ガス排出削減を定めた「クリーン電力計画」は法で定められているので簡単には撤廃できない。同計画を巡っては「行き過ぎ」と考える州や機関が政府を相手どって起こした訴訟が進行中だ。被告側の政府の姿勢が180度変わるため、和解や条文解釈を巡る事実上の規制緩和に動く可能性はある。

2016年11月、モロッコで開いたCOP22ではパリ協定のルールづくりを始めたが先行きは不透明だ
画像の拡大

2016年11月、モロッコで開いたCOP22ではパリ協定のルールづくりを始めたが先行きは不透明だ

 米国から気候変動条約事務局への資金拠出は、パレスチナを加盟国とする国連機関への拠出を禁じた既存法に基づき停止する公算が大きい。オバマ政権は、条約事務局は「機関」ではないとしてきたが、トランプ大統領は解釈を変えるだろう。

 途上国の温暖化ガス削減を促すための資金支援も撤回の見通しだ。パリ協定は支援と削減をセットで交渉し絶妙なバランスの上で合意した。日本などが穴埋めを迫られる恐れもある。

 世界の温暖化対策で米国の存在感が低下するのとは対照的に影響力を増すのが中国だ。昨年11月の第22回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP22)で解振華・気候変動事務特別代表は「低炭素・循環型経済に移行する」と宣言した。太陽光・風力発電を増やすほか、今年は全土で排出量取引制度を始める。

 解氏は30年に温暖化ガス排出量のピークを迎える目標を「早められるだろう」と自信をみせた。中国のエネルギー・環境問題に詳しい郭四志帝京大学教授は「中国は環境を国際金融、貿易と並ぶ重要分野と位置づけ主導権を握りたいと考えている」と指摘する。日本の戦略立案にあたり、中国の出方にこれまで以上に注目する必要がある。

[日経産業新聞2017年2月2日付]


「日経産業新聞」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。直近30日間分の紙面が閲覧可能。電子版の有料会員の方は、月額1500円の追加料金でお読み頂けます。


人気記事をまとめてチェック

「テクノロジー」の週刊メールマガジン無料配信中
「テクノロジー」のツイッターアカウントを開設しました。

Eの新話(日経産業新聞)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

【PR】

Eの新話(日経産業新聞) 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

気候変動問題に金融が寄与 投資通じ環境意識促す

 パリ協定が企業の気候変動問題への対応を加速化している。金融機関も例外ではなく、グリーンボンドへの投資や投資先企業との戦略的対話などに積極的だ。金融機関には投資先の二酸化炭素(CO2)排出量の開示や、…続き (8/14)

AP

G20の温暖化対策 米と溝も足取り止めず

 7月7~8日にドイツのハンブルクで20カ国・地域(G20)首脳会議が開催された。新聞でも報道されたように、地球温暖化を巡る討議では、2020年以降の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した米国と、…続き (8/7)

大阪ガスはネガワット取引にコージェネレーションシステムを活用する

節電電力売買「ネガワット取引」、既存事業の武器に

 7月中旬に入ってから、全国の気温観測地点の半数以上で最高気温がセ氏30度以上となる真夏日が続いている。暑さがさらに厳しくなれば、冷房の使用などにより電力需給が逼迫する恐れがある。
 需給緩和策として注…続き (7/24)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

TechIn ピックアップ

08月17日(木)

  • 中国が「AI超大国」になる動きは、もはや誰にも止められない
  • 視覚障がい者の移動を支援するリストバンド「Sunu Band」―超音波で周囲を把握
  • タメ息ものの美しさ! 空撮カメラマンが撮ったフジロックの夜景ドローン写真

日経産業新聞 ピックアップ2017年8月17日付

2017年8月17日付

・ペイパル、金融やITの大手と提携加速
・無線で電気供給、活躍の場広げる パナソニックなどが技術開発
・埼玉大、空中のボールの動きを再現 磁力で触れずに回転
・IoT導入、中小に優しく シチズンマシナリーが新サービス
・サイバー・バズ、社長と釣りして遊ぶインターン 学生、親も同伴で…続き

[PR]

関連媒体サイト