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金融安定へ 温暖化の財務リスク開示案の中身
日本総合研究所理事 足達英一郎

2017/1/19付
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 世界の金融行政の元締めといえる金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」がおよそ1年をかけて検討した提言書原案が昨年12月14日に公表された。地球温暖化が世界経済に深刻なリスクを招き、多くの分野に影響を及ぼすという問題意識に基づくものだ。気候変動に伴う財務影響が正しく評価されないまま突如としてコストが顕在化すれば、金融市場を不安定にさせるという懸念が起点となった。

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 タスクフォースに期待されたのは、企業活動において、投資家、銀行、保険会社などが重大なリスクを理解するうえで役立ちそうな気候関連財務情報の開示方法を開発することであった。

 今回、(1)気候関連のリスクと機会に関わる組織のガバナンスを開示する。(2)気候関連のリスクと機会がもたらす組織のビジネス、戦略、財務計画への実際の及び潜在的な影響を開示する。(3)気候関連リスクについて、組織がどのように識別、評価、及び管理しているかについて開示する。(4)気候関連のリスクと機会を評価し管理する際に使用する指標と目標を開示する――という4項目が提言の骨子となった。

 特徴は、一般企業向けと投資家、銀行、保険会社向けそれぞれに、望まれる気候関連財務情報開示方法が示された点だ。

 例えば、銀行には「総資産のなかの化石関連資産の額と割合や、気候関連の事業機会に結びつく資金供給の額を開示すべきだ」といった記述が盛り込まれた。原案は2月12日までの意見招請を経て、7月7~8日にドイツのハンブルクで開催予定の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)前に、金融安定理事会に答申される見通しである。

 この原案で、専ら目を引いたのは「シナリオ分析」の利用を強く推奨するとした点だ。

 こうしたシナリオの代表例としては、地球の平均気温上昇を産業革命以前の水準から2度未満に抑えるための開発経路と排出曲線を示す、いわゆる2度シナリオがある。ほかにも、現在の気候変動緩和策が奏功しなかった場合の成り行きシナリオ、パリ協定の国別約束(NDC)シナリオなどが例示されている。

 言うまでもなく、気候変動の重大な影響のタイミングや規模には大きな不確実性がある。見通しが困難であるが故に、複数のシナリオをもとに、気候関連財務情報開示を行うことが重要だとしたのは一般企業、投資家、銀行、保険会社のいずれにも荷が重いだろうが、極めて合理的ではある。

 一方、気候関連財務情報開示をめぐって、金融関係者の熱い視線が注がれているのがフランスの取り組みだ。

 フランスは、2015年8月17日に成立させた「グリーン成長のためのエネルギー移行法」の173項規定5に、「政府は16年末までに、銀行が通常行っているストレステストに、気候変動リスクをどう反映したらよいかに関する報告書を作成し、議会に提出しなければならない」との一節を盛り込んだ。

 ストレステストとは「健全性審査」とも呼ばれ、例えば「今後3年間で景気が失速した場合、銀行の中核的自己資本はどれだけ毀損するか」というような試算を意味する。欧州では、資産査定の結果、自己資本比率の大幅な低下リスクが判明した銀行に対して、欧州中央銀行や各国の当局が個別に指導することとなっている。

 ここに気候変動リスクを要素として取り込む場合の方法論が果たしてどうなるか、という関心が報告書への注目の理由だ。ここでも「~した場合」に該当するシナリオ分析が大きな鍵を握ることは間違いない。一般企業や金融機関にとって、気候変動のシナリオを的確に設定できる能力が、経営の巧拙に結びつくという時代が、現実味を帯びてきているのである。

[日経産業新聞2017年1月19日付]


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