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中国、排出量取引にも「一帯一路」 日本勢不利
編集委員 久保田啓介

2017/1/5付
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 温暖化ガスの排出削減をめざすパリ協定の発効を受け、今年は各国・地域が排出抑制を本格化させる。なかでも注目されるのが中国が夏にも導入する全国統一の排出量取引制度だ。これまでの自治体レベルの制度を拡大し、将来は欧州やアジア近隣国との連携をめざす。中国に生産拠点をもつ日本企業の経営戦略や日本国内の制度導入をめぐる論議への影響は必至だ。

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 中国は2013~14年、上海市、北京市、広東省など2省5市で排出量取引のモデル事業を始めた。二酸化炭素(CO2)排出量が年1万~2万トン以上の計2千社以上を対象に排出量を割り当て、超過した分や足りない分を売買して義務達成をめざす方式だ。

 7自治体での取引総量は8千万トンを超え、結果を公表していない重慶市を除くと、大半の企業が義務を達成した。排出権価格も1トン当たり平均30元(約500円)で推移した。

 中国の環境政策に詳しい科学技術振興機構中国総合研究交流センターの金振フェローは「100点満点で70点はつけられる」と話す。排出枠を翌年に持ち越せる仕組みなどを導入し、取引量や価格が安定するように工夫した点などが評価できるという。

 全国統一の制度はこれを引き継ぐ。石油化学、鉄鋼、電力など8業種から順次導入し、最終的に7千~8千社が対象になる見通し。取引所もこれまでの北京、天津などに福建省や四川省が加わり計9カ所になる。

 パリ協定で中国は国内総生産(GDP)当たりCO2排出量を30年までに05年比で60~65%減らすと約束した。排出量取引の拡大で年3億トン前後の排出削減を見込む。炭素に価格をつけて市場原理で排出を減らす「カーボンプライシング」が世界で注目されるなか、その趨勢を左右することは間違いない。

 まず注目されるのは規模の大きさだ。取引制度でカバーされる排出量は30億~50億トンになり、同国の排出量の5割前後になる。05年に取引を始めた欧州連合(EU)の制度では約20億トンなので、中国はこれを抜き世界最大となる。

 2つめの注目点が欧州やアジア近隣国の取引制度との接続(リンク)を予定していることだ。アジアでは韓国が15年に取引制度を導入し、台湾やタイなども導入を検討している。

 専門家は「中国が排出量取引を外交の重要なカードとして使うことは間違いない」と口をそろえる。想定されるのが、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などを活用して近隣国を支援する「一帯一路」戦略と組み合わせることだ。

 たとえば周辺国の資源開発や都市インフラ整備に資金・技術面で協力し、それにより減ったCO2を排出権として取引できるようにする。「省エネ技術などを規格化し、中国が主導権を握ろうとする動きも予想される」(科技振興機構の金フェロー)

 地球環境戦略研究機関(IGES)の高橋健太郎主任研究員も「欧州や韓国の制度とリンクすれば、中国に生産拠点をもつ日本企業が不利になる恐れもある」とみる。たとえば欧韓の企業が中国拠点でCO2を減らせば、排出枠を中国内で売るか、自国で買い取り国内排出とオフセット(相殺)するか、有利な方を選べる。取引制度のない日本の企業には選択肢がない。

 環境省は来年度から排出量取引の制度設計を検討し、19~21年度に導入の可否を決める。同省幹部は「取引制度の重要性は認識しているが、日本では経済界の反対論が強く、理解を得るのは容易でない」と話す。

 世界最大の排出国である中国が加わり、排出量取引の構図は大きく変わる。日本の導入検討のスケジュールはいまのままでよいのか。議論を急ぐべきだ。

[日経産業新聞2017年1月5日付]

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