トップ > 社説・春秋 > 記事

社説

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

欧州は結束固め危機の連鎖を防げ

2016/12/27 2:30
保存
印刷
その他

 欧州が再びテロの惨劇に見舞われた。ドイツの首都ベルリンのクリスマス市にトラックが突入し、10人を超える死者を出した。

 昨年のパリに続き、今年もブリュッセル、ニースなどでテロが相次いだ。市民を無差別に襲う卑劣な行為は断じて許されない。

 チュニジア出身の容疑者はイタリアのミラノで警察官に発砲し、応戦した警察官に射殺された。欧州各国の警察当局による連携の産物ならば、一定の前進だ。

統合による安定訴えよ

 一方で疑問も多い。たとえば、容疑者は独当局の監視下に置かれていたが、なぜその網をかいくぐってテロを実行できたのか。

 なぜ犯行後にフランス、イタリアへと簡単に逃走できたか。過激派組織「イスラム国」(IS)の関与はどこまであったか。真相を徹底究明し、欧州連合(EU)と加盟各国による今後のテロ対策に生かさねばならない。

 欧州では、2010年からのギリシャ危機がなおくすぶる。15年から難民の大量流入、テロの脅威が加わり、EUは「複合危機に直面している」とフェルホフスタット元ベルギー首相はいう。

 次のリスクは「政治危機」だろう。懸念されるのは、テロを受けて欧州各国の極右勢力が勢いづき、難民・移民の排斥を唱える世論が強まりかねないことだ。

 ドイツには15年だけで100万人を超える難民が殺到し、メルケル独首相はできるだけ受け入れる寛容な政策をとった。独民族主義政党はこれを厳しく批判する。

 17年の欧州は国政選挙が目白押しだ。3月にオランダ下院選挙、4~5月にフランス大統領選挙、秋にドイツ連邦議会選挙がある。

 現時点で極右や大衆迎合主義の政党の躍進が予想されている。反EUや反難民・移民を唱えるこうした政治勢力は、グローバル化、市場経済、開かれた社会、さらなる欧州統合を拒もうとしている。

 しかし、欧州の主要国が二度と戦火を交えないため重ねてきた欧州統合を後退させては、欧州や世界の安定を損なう。経済や雇用にも悪影響を与えるのは確実だ。そうした点を各国の主要政党は粘り強く訴える必要がある。

 同時に、極右政党台頭の背景にある欧州市民の不安や不満にもしっかりと目を向けてほしい。

 テロ対策の強化は最優先課題だ。また中東や北アフリカから受け入れた難民が地域社会に溶け込めるように、言語教育などの地道な対策を講じることも、長い目でみたテロ・治安対策になる。

 経済面では、まずEU全体の成長力を底上げし、雇用拡大につなげる必要がある。17年3月、EUの前身である欧州経済共同体の創設をうたったローマ条約の調印から60年を迎える。

 これを機に、EU域内でヒト、モノ、カネ、サービスが自由に行き来できる単一市場の潜在力を発揮するため、エネルギーやデジタルなどの分野で市民に成果が見える具体策を打ち出してほしい。

 技術革新の波に追いつけずにいる人材にはきめ細かな職業訓練や再就職支援を講じる。安全網も再構築する。こうした対策を積み重ねて「包括的で持続可能な成長」の青写真を示すときだ。

 ユーロ圏の銀行や金融の再生も道半ばだ。イタリア政府は、多額の不良債権を抱えるイタリア銀行3位モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテパスキ)への公的支援を決めた。

銀行の負の遺産一掃を

 大事なのは、モンテパスキを含むイタリアの銀行が再編、店舗統廃合、事業モデルの刷新を通じ、負の遺産を一掃することだ。

 金融システム不安を招かないように、公的支援の是非を審査する欧州委員会は柔軟に対応してほしい。その先の道筋として、ユーロ圏各国は銀行システムを一元的に運営する「銀行同盟」を完遂する作業を急ぐ必要がある。

 英国のEU離脱では、英政府が17年3月末までにEU側に正式に方針を通告する。その後、EUが指針をまとめてから交渉入りするが、実質的な期限は18年10月までの約1年半とされる。

 EUと英国の双方が簡単に合意できる安易な解決策はない。短期間ではあるが危機意識を持って真剣に交渉に臨み、着実に協議を前進させてほしい。

 「常に行動が小出し・後出しなのが失敗の原因だ。17年をEU崩壊の始まりにしてはならない」とフェルホフスタット氏はいう。

 欧州が大きな正念場を迎える来年、EUや各国の指導者は結束を固めて行動し、危機の連鎖を防がねばならない。

社説をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

保存
印刷
その他

電子版トップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる、業界がみえる。非上場企業を含む4200社、67業界のニュースとデータを網羅

【PR】



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報