新風 Silicon Valley(日経産業新聞)

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

日本企業が米スタートアップに抱く5つの誤解
ジョアナ・ドレイク・アール(コア・ベンチャーズ・グループ ジェネラルパートナー)

2016/12/9 6:30
共有
保存
印刷
その他

 シリコンバレーのスタートアップ(ベンチャー企業)に対して、日本企業は5つの誤解をしているようだ。今回はそれについて述べたい。

Current TVなどのメディア関連企業のエグゼクティブやDeNA Westの最高執行責任者を経て、コア・ベンチャーズ・グループのジェネラルパートナーに就く。スタンフォード大学修士、カリフォルニア大学バークレー校卒。

Current TVなどのメディア関連企業のエグゼクティブやDeNA Westの最高執行責任者を経て、コア・ベンチャーズ・グループのジェネラルパートナーに就く。スタンフォード大学修士、カリフォルニア大学バークレー校卒。

 まず、シリコンバレーのアクセラレータープログラム(ベンチャー支援の仕組み)は、優れたスタートアップの実績がある人にとって、最適な場であるという誤解だ。

 シリコンバレーのアクセラレータープログラムは、シリコンバレーのベンチャーでの経験が乏しい人たちを対象にしている。現地でのネットワークがなく、資金調達や人材の供給、企業の創設一般に支援が必要な人たちだ。シリコンバレーの外にいた人が起業しようとしたときに役に立つプログラムなのだ。

 一方、東京には実績がある優秀な起業家を対象にしたアクセラレータープログラムがある。その理由は、シリコンバレーのような50年近くにおよぶベンチャー支援のインフラサービスの歴史を東京が持っていない点にある。

 次は大企業であれば質の高いディールフロー(資金の投資と回収)を実現する手法を調査研究できるという誤解だ。

 シリコンバレーのスタートアップへのディールフローを巡る競争は非常に激しい。スタートアップに関する情報が不完全であることもそれに拍車をかけている。投資家や買収企業、弁護士や銀行などは秘密裏に活動している。シリコンバレー内部の人的資本ネットワークがなければ、有用な情報は得られない。大企業であっても、シリコンバレーの外部から事業を開発しようとする試みは不発に終わる可能性が高い。

 3つめの誤解はシリコンバレーを短期間でも訪れれば、現地のスタートアップを理解し、正しく評価できるというものだ。

 シリコンバレーの経済のエコシステム(生態系)を理解したり、スタートアップとの信頼関係を構築したりするには、3年から5年を要する。日本企業の代表者がシリコンバレーに赴いて18カ月(1年半)で離任すると、代表者が現地の事情がわからないままになってしまい、その企業のブランドには傷がつくだろう。

 シリコンバレーでネットワークを構築するため、最高の人材に裁量と経営資源を与え、最低でも3年間は配置する必要がある。シリコンバレーで大きな成功を収めている日本企業では、代表者が実力のある取締役であり、長期滞在していたり、定期的に訪れていたりしている。

 信頼関係があればスタートアップへの投資や提携(ディール)を勝ち取れるという誤解もあるようだ。

 起業家や一流のベンチャーキャピタリストとの信頼関係を有することは有効だが、日本とは異なり、「身内に対する優遇」を受ける可能性は低い。スタートアップの経営陣は自社にとって最良の取引条件を常に保持する信認義務に拘束されているからだ。

 そして5つめの誤解は、スタートアップは国際的な企業やそのブランドとのパイプを構築することに魅力を感じているというものだ。

 スタートアップは一流のベンチャーキャピタルによる関与を好む。魅力のある事業を行っていることや相当の収益を生む可能性を有していることの証左になるからだ。半面、スタートアップは、国際的な企業が取引を行う際に求めてくる複雑な契約に対する経験や耐性に乏しい。

 次回はシリコンバレーのスタートアップが日本企業に対して持っている5つの誤解を紹介する。

[日経産業新聞2016年12月6日付]


「日経産業新聞」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。直近30日間分の紙面が閲覧可能。電子版の有料会員の方は、月額1500円の追加料金でお読み頂けます。


人気記事をまとめてチェック

「テクノロジー」の週刊メールマガジン無料配信中
「テクノロジー」のツイッターアカウントを開設しました。

新風 Silicon Valley(日経産業新聞)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

【PR】

新風 Silicon Valley(日経産業新聞) 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

日本でイノベーション生むイントレプレナー育成

 2015年4月の安倍晋三首相のシリコンバレー訪問以降、日本におけるイノベーション推進やベンチャー企業支援が活発になっている。日本における起業も増えたし、リスクマネーの源泉であるベンチャーキャピタル(…続き (8/18)

排出量取引制度延長の署名式に参加したカリフォルニア州のブラウン知事(左)とシュワルツネガー前知事(7月25日、サンフランシスコ)=AP

AP

トランプ政権に反旗 カリフォルニアで環境投資再び

 「これは私のためではない。(将来の社会を担う)あなたたちのためだ」
 米カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事は州議会でこう述べて「キャップ・アンド・トレード方式」の実施期間を10年間延長する法案を…続き (8/11)

経済構造が大転換、シリコンバレーの意味を問い直す

 「人工知能(AI)」「ロボティックス」「ブロックチェーン」「オープンイノベーション」「シェアリングエコノミー」「デザインシンキング」。これらのキーワードを見ない日はない。社会の資本主義的な構造は変わ…続き (8/4)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

TechIn ピックアップ

08月23日(水)

  • 「Microsoft Edge」でもっと快適にブラウジングするための10のヒント
  • 自動車セキュリティ専業ベンダー、IT知見もふまえ「現実解」を提供
  • 不老の秘密は「600人のエストニア人の血」で解き明かせるか―シリコンヴァレーのスタートアップの挑戦

日経産業新聞 ピックアップ2017年8月23日付

2017年8月23日付

・富士フイルム、橋やトンネルのひび割れ、画像で自動診断
・JTがアトピー薬19年発売 たばこ一本足の脱却へ前進
・水ing、自治体向けに省エネし尿処理設備 CO2を2割削減
・ゲスタンプ、熱間プレス、加工速度2.5倍 来年から量産へ
・東急リバブル、リノベ物件の資材一括調達 施工業者の負担軽減…続き

[PR]

関連媒体サイト