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残業せぬイスラエル起業家 メリハリが秘訣
サムライインキュベート社長 榊原健太郎

2016/11/24付
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 日本とイスラエルを行き来するようになって2年半になる。

 イスラエルに行くようになって間もないころは現地の著名な起業家や投資家50人程度にアポイントを入れてミーティングをするようにしていた。その場では必ずこの質問をした。「あなたの人生で今まで成功したことはなんですか」

74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。
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74年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て00年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

 なぜ、私がこの質問をしたのか。それは彼らが何を大切にして生きているのかが明確にわかると思ったからだ。一刻も早く彼らのことを理解し、親交を深めたいというのも理由の1つだった。

 彼らから返ってきた答えは驚くほどに皆、同じものだった。その回答は「すてきな奥さんに出会ったこと。そして、すてきな子どもたちに恵まれたこと」である。

 イスラエルの起業家や投資家にとって、優先順位が高いことは、仕事よりも何よりも、家族である。そして彼らはそのことをビジネスミーティングですがすがしく話す。

 日本人である私は、彼らを見てこう感じた。「自分自身の今までの人生は何だったのか」「仕事だけに費やしてきた人生が愚かで悲しい」

 彼らが家族のことを最優先している背景には、イスラエルという国やユダヤ民族が抱える特有の事情がある。

 ナチスドイツによるユダヤ人迫害やホロコーストによって、家族または民族が存亡の危機に直面したという歴史がある。そうした苦難の歴史を経てイスラエルという国を建国した後も、国境を接する周囲の国々とは常に緊張関係にある。負けたことはないとはいえ、大規模な戦争になったこともある。

 イスラエルにいると、彼らが1日をまるで一生のようにとらえていることがわかる。いつこの世からいなくなったとしても悔いを残さないようにする、そして何があっても家族たちを存続させなくてはならない――このようなマインドを持って日々を送っているのだ。

 彼らは自分たちの周りにある問題や課題を決して先送りしようとはしない。1日を一生のようにとらえているから、すぐに解決しようとする。

 問題や課題を見つけ、解決するためのアイデアを発想し、徹底的に本音で議論する。しかも常に楽しみながらそれらを行っている。

 イスラエルでは、学校の必修科目にプログラミングが含まれている。兵役についている間もほぼ全員がプログラミングを学んだり、行ったりする機会がある。国民の多くが若いうちにIT(情報技術)に関する基礎的な知識を身につけているので、イスラエルでは、事業を創り出すスピードは格段に速い。

 しかも事業を加速させるために費やしている労働時間はそれほど長くない。彼らは残業をほとんどしない。平日であれば午後6時にはオフィスを出てしまう。家に戻ってからは夫婦が協力して育児や家事をする。育児や家事が終わったあと、寝るまでの間の1~2時間を仕事に充てる。

 イスラエルでは、ユダヤ教で定められた安息日(休日)には、ほぼ全ての店舗が閉まり、公共交通機関もストップする。そのため、安息日には仕事を一切せずに、家族や友人と一緒にゆっくり過ごすというのがイスラエルの人たちのライフスタイルである。

 宗教的な規範に基づいているとはいえ、イスラエルでは、かけがえのないプライベートの時間を確保できる。そうした時間のゆとりが、新しい発見をしたり、めったにできないような経験をしたりする機会を与えてくれる。そうした発見や経験が新たなビジネスのアイデアを生む。

 かたや日本では、長時間労働が原因で自殺に追い込まれてしまった人もいる。今の働き方は働く人の健康をむしばむだけでなく、イノベーションの芽も摘んでしまっているのかもしれない。

[日経産業新聞2016年11月24日付]

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