面白く生きる! (日経産業新聞)

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

リーダー不在「Gゼロ」時代、変わる世界秩序
グロービス経営大学院学長 堀義人氏(43)

2016/11/18付
保存
印刷
その他

 米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利した。今年5月に「英国の欧州連合(EU)離脱やトランプ米大統領が実現した場合、新たな世界秩序はどうなりますか」と、ワシントンDCで開かれた米シンクタンクの会議で聞いたことが、思いだされる。そのときは「考えたくもない」と流されたが、半年たった今、現実のものとしてその質問に世界が対峙することになった。

 2つの出来事の共通項は何だろうか。よく「格差が原因だ」と言われるが、それは明確に違う。特に米国の場合は、年収5万ドル未満の相対的な低所得者層はヒラリー・クリントン氏に投票しているからだ。

 2つの出来事に共通する支持者の特徴は(1)地方(2)40代以上(3)男性(4)相対的に低学歴(5)白人――だ。英米で起こったのは、主に地方にいる労働者の反乱である。経済のグローバル化や移民の流入で損をしたという不満が根底にある。

 では、この「地方の反乱」は、日本にも起こるのだろうか。僕は今年の夏に地元茨城県の全44市町村をまわった。出身地である水戸の市街地再生プロジェクトを始めたり、茨城のプロバスケットボールチームのオーナーになったりするなど今年に入り故郷と関わることが多くなったのがきっかけだ。地元の農家や工場労働者など様々な人と話をしたが、英国のEU離脱や米大統領選のトランプ氏勝利の原動力に共通する地方の不満は浮かんでこなかった。

 日本の場合、地方在住の中高年男性は自由民主党支持の保守層が多い。例えば地方の工場では経営者と工場労働者の間の給与格差はそれほど大きくない。ともに同じ作業服を着て同じ社員食堂で食事をする。終身雇用を前提とし従業員を大切にする家族的経営がなされている。高齢者向けの社会保障制度も十分すぎるほど充実している。地方の中高年層は現状に大きな不満に抱いているようには見えなかった。むしろ都心部の若者に不満を多く感じるほどだ。

 世界の主要先進国の中でも日本は最も政治的に安定している国だ。他国をみるとフランスはルペン党首率いる極右政党の国民戦線が勢いを増し、ドイツではメルケル首相の人気が落ちている。これらの国には英米発の「反乱」が波及する可能性もある。

 米調査会社ユーラシア・グループの社長で国際政治学者のイアン・ブレマー氏は、トランプ大統領誕生により米国が内向きになりリーダーがいなくなる「Gゼロ時代」が加速すると予言している。世界が、米英主導型からGゼロ時代に移り変わるなか、新たな世界的秩序をロシアや中国などが主導するようになれば憂慮すべきことだ。民主主義や資本主義、法の支配、基本的人権などが脅かされかねないからだ。

堀義人(ほり・よしと)1986年京大工卒、住友商事入社。米ハーバード大経営大学院で経営学修士号(MBA)取得後、92年にグロービス設立。「ヒト・カネ・チエの生態系を作り社会の創造と変革を行う」ことを目標に、経営大学院の経営、ベンチャーキャピタルの運営、経営ノウハウの出版・発信を手掛ける。茨城県出身。54歳。

堀義人(ほり・よしと)1986年京大工卒、住友商事入社。米ハーバード大経営大学院で経営学修士号(MBA)取得後、92年にグロービス設立。「ヒト・カネ・チエの生態系を作り社会の創造と変革を行う」ことを目標に、経営大学院の経営、ベンチャーキャピタルの運営、経営ノウハウの出版・発信を手掛ける。茨城県出身。54歳。

 ブレマー氏は、トランプ氏勝利で利を得る「winner(勝者)」のひとつに日本の安倍晋三政権を挙げた。「米国はもう世界の警察官にはなれない」という姿勢をトランプ氏がとっているため、日本と役割分担をすることになるだろう。その結果、安倍首相が目指す防衛体制の増強や憲法改正という主張が通りやすくなるからだという。

 主要国が不安定さを増すGゼロ時代において、日本は政治的な安定を強みに世界の新たなリーダーとして役割を果たしていく必要があるように思う。日本はロシアとの平和条約、EUとの自由貿易交渉、中国との平和的対話や東南アジア諸国連合(ASEAN)との経済交流などを進め、世界秩序の担い手としての役割が増していくのではないか。

 17日に安倍首相とトランプ次期大統領が会談した。世界の首脳としては初めての会談だ。英国がEUから離脱した後やトランプ氏就任後のGゼロ時代の世界秩序の形成では、政治的に安定している日本がリーダーシップの一翼を担うことを期待されているのであろう。

[日経産業新聞2016年11月18日付]

「日経産業新聞」「日経MJ」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。電子版の有料会員の方は、日経産業新聞は月額1500円、日経MJは同1000円の追加料金でお読み頂けます。

面白く生きる! (日経産業新聞)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

【PR】

面白く生きる! (日経産業新聞) 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

今年のダボス会議の基調講演には習近平氏が中国の国家主席として初めて登壇しスポットライトを完全に独り占めした=ロイター

ロイター

ダボス会議、発言してこその存在感 世論も左右

 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)には多様なステークホルダーが参集する。政治家、経済人、国際機関、中央銀行、学者、NPO法人、宗教家、科学者、シンクタンク、ときには俳優――。集うメディアの数も…続き (2/15)

EU離脱が確実となり、喜ぶロンドンの離脱派=写真 小林健

リーダーとメディアへの信頼、世界で崩壊

 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でもう1つ実感したことは、世界でリーダーや体制への信頼が崩壊していることだ。会議初日の朝に開催される、米大手PR会社エデルマンによる信頼度調査報告の結果は、主…続き (2/8)

トランプ大統領=ロイター

ロイター

国際秩序崩壊の危機、修羅場を経た日本は安定

 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加した。今年で10回目の参加となるが、今回ほど衝撃を受けたことはなかった。英国の欧州連合(EU)離脱やトランプ政権誕生を巡る各界リーダーの話を聞き、戦後7…続き (2/1)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

日経産業新聞 ピックアップ2017年2月20日付

2017年2月20日付

・家電用マイコン品ぞろえ6倍 ローム
・動画から3Dモデル ステレオカメラ不要で低コスト 会津大
・失敗フィルムが高級文具に 住友化学、和紙のようなフィルム
・富士電機 外食・物流向け省力化機器をスピード試作
・フジクラ、米で細型光ファイバー生産へ…続き

日経産業新聞 購読のお申し込み
日経産業新聞 mobile

[PR]

関連媒体サイト