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無駄をなくして幸福追求 循環経済は日本の好機
伊佐山 元(WiL共同創業者兼最高経営責任者)

2016/9/13付
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 先日、大手企業の経営者が集まる合宿に参加した。テーマは「サーキュラーエコノミー(循環経済)」。タクシー配車アプリの米ウーバーテクノロジーズや民泊サービスの米エアビーアンドビーに代表されるシェアリングエコノミーや、リサイクル・再利用の考えを踏まえたビジネスがこれからの世界を席巻するという議論が繰り広げられた。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

いさやま・げん 1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

 直近200年の歴史を振り返ると、経済発展と資源の利用は比例の関係にあった。国が栄えるためには、天然資源を使い、大量生産と大量消費の実現が必須であったのだ。

 一方、昨今言われているように化石燃料や水などの資源の希少性がますます高まっていくとすれば、消費をベースとした発展は限界がきているといえよう。持続可能な世界成長の仕組みを考える上で、徹底した無駄をなくす発想は今後の経済には必要なのかもしれない。

 無駄にも色々ある。資源の無駄遣いだけでなく、使われていない資産、まだ使えるのに回収されている製品などもある。実際に常時稼働している自動車は5%程度にすぎないという。いかに多くの車が使われずに駐車場に置かれたままになっているのかを象徴する数字だ。電気自動車(EV)の電池も20%程度の劣化で新しい電池に買い替えられてしまう。中古になった電池は一般家庭で蓄電池として使ったり、災害時の電源にしたりすれば、利用価値はまだあるはずだ。

 考えてみると、家の中の資産や部屋ですらも、100%稼働ということはまずない。使っていないブランド物のカバンや衣類、子供が成人して使わなくなった部屋。このような資産の空き時間や空きスペースを必要としている他人に安心して貸すことができれば、そこに利用価値とビジネスが生まれるのは自然なことだ。

 このような新しいパラダイム(枠組み)は、これまで製造業で競争力を保ち、「ものづくり日本」というイメージに誇りを持って来た日本にとっては、戦略の大きな転換を求められる事態でもある。モノを売るのではなくコト(利用価値)を提供してもうけるというのは、ものづくりで成長してきた日本の大企業にとって、簡単な話ではない。

 このような発想はぜいたくをし尽くしてきた先進国の勝手な理屈であり、資源の売買やモノを売ることで生活している新興国や発展途上国にとっては意味のない理想論でもある。サーキュラーエコノミーの仕組みも世界で一体となって導入されない限り、効果は半減する。

 この議論を突き詰めると、我々の幸せや富を国内総生産(GDP)という尺度で判断することの限界にたどり着く。GDPを成長させようとする発想や競争がある以上、モノを多く売ってもうけるという仕組みがすぐに変わるとは思えない。サーキュラーエコノミーの信奉者が掲げるような、持続可能な社会を目指すには、GDP以外の尺度で国家の健全性と幸福度を測る仕組みが必要だろう。もしかしたら、少子高齢化で国の体質変換を迫られている日本こそ、無理なGDP成長率に縛られるのではなく、新しい基準を導入し、普及させることによって、世界におけるリーダーシップをとれるようになるのかもしれない。

 日本はもともと天然資源に恵まれていないため、その効率的・効果的な利用にたけている。モノの消費にとらわれずに、その有効利用で無駄をなくし、利用者の満足度や幸福度を上げる――。そんな社会が未来にあってもよい。

[日経産業新聞2016年9月13日付]

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