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春秋

2016/8/17 3:30
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 売れっ子女優がいきなり出奔したのだから世間は大騒ぎしたようだ。1951年6月、高峰秀子さんは自身を取り巻くさまざまな問題から逃れるようにパリに旅立った。面倒な人間関係も仕事もなげうち、人生をリセットしたのである。異郷での暮らしは半年に及んだ。

▼学生街のアパート。外は雨。電話もかかってこない。誰も訪ねてこない。日本にいれば四六時中ファンの目にさらされる27歳のスターは手記にこうつづった。「全く自分を自分に返して貰(もら)ったという気がする」。子役時代から芸能界ひとすじに生きてきた高峰さんはこの体験で大きく脱皮し、帰国後に新たな境地をひらく。

▼現代のスターには、こんな自由はとても許されないのだろう。人気グループSMAPがやはり解散すると聞き、国民的アイドルの、断ち切れなかったしがらみの強さを知る。5人はもう不惑の年回りらしい。本来ならそれぞれの道を自在に歩んだっていいはずだが、そういう再出発ムードの漂わぬ解散劇がはた目にも辛(つら)い。

▼そういえば高峰さんは単独パリ行から7年ほどして、夫の松山善三監督とまた半年以上も欧州を巡っている。じつに気ままな旅で、それを見守った業界もファンもずいぶん鷹揚(おうよう)だったのだ。さて当代の人気者たちの今後はいかに。もとより才能のある5人が、どうか自分を自分に返して貰って大いに活躍できますよう――。

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