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AI・ロボットと共生し価値創出を 産業革命4.0が拓く未来

2016/8/12 3:30
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 人工知能(AI)やロボットに代表される次世代の技術が、社会を大きく変えようとしている。この潮流を戦略的に生かし、活力のある日本の未来を拓(ひら)いていきたい。

 蒸気機関、電力、コンピューターの台頭。そうした過去3度の革新に続くいまの動きは、「第4次産業革命」「インダストリー4.0」と呼ばれる。IT(情報技術)が飛躍的に進歩し、産業や就業の構造を塗り替える。

■事業モデル刷新がカギ

 新たな事業や市場をつくる競争が世界規模で始まった。イノベーションの停滞が目立つ日本も好機を逃さず、経済成長につなげなければならない。

 国立社会保障・人口問題研究所は、1995年に8726万人いた15~64歳の生産年齢人口が2030年には2割強減ると推計する。労働力不足は成長の阻害要因になる。新技術をハードルを越える突破口にしたい。

 変革を担うのは企業だ。

 長崎県佐世保市のテーマパーク会社ハウステンボスは、ロボットが受付業務や清掃などをするホテルを1年前に開業した。客室は144と当初に比べ倍増したが、従業員は30人から10人に減った。82台から182台に増えたロボットが主な戦力だ。AIを接客に使う実験も進める。

 沢田秀雄社長は「顧客満足度を下げずに運営するノウハウが得られた」と、ロボットホテルの全国展開を決めた。労働力の確保が難しい立地でも成り立つホテル経営の手法を確立し、新市場に挑戦していく。

 技術をうまく使って人手不足を補うだけでなく、事業モデルを刷新して新たな価値を創出する。そういう姿勢が企業を強くする。

 労働生産性の向上にも技術は生きる。政府によると、日本の非製造業の生産性は米国の5割程度にとどまる。とくに飲食や宿泊、小売り、運輸など業務の多くを人手に頼るサービス産業が低い。裏を返せば、技術の活用で伸びる余地が大きい。

 ベンチャー企業のライフロボティクス(東京・江東)は、狭い場所にも設置でき、人と並んで働けるロボットを開発した。販売先は製造業だけではない。牛丼の吉野家など外食、物流にも広がる。「サービス産業は先端技術と縁遠い」と思い込まず、生産性を引き上げる知恵を絞りたい。

 単調な動作の繰り返しといったきつい仕事をロボットに任せられれば、人が働きやすい職場になる。女性や高齢者も活躍でき、就労機会の拡大にも結びつく。

 一方で、技術が人の仕事を奪いかねないとの懸念がある。野村総合研究所などの調べでは、事務員や店員など日本の労働人口の49%が就く職業が、今後10~20年でAIやロボットで代替可能になる。

 しかし「技術は脅威」と過度に身構えるのは誤りだ。消える職業がある半面、生まれる職業もある。職場に導入したロボットを管理する「ロボットコーディネーター」が一例だ。新たな課題の発見やひらめきなど、人の力が生きる場面もなくならない。

■脅威論排し技能を磨け

 技術との共生が、人の能力を引き出す点も見逃せない。

 AIベンチャーのエーアイスクエア(東京・港)は、AIと人が連携して消費者の問い合わせに応じるコールセンターを新設する。定型的な内容はAI、込み入った内容は人と役割分担する。「大事な場面は人が対処する。専門職の自覚が生まれ、やる気が出る」と石田正樹代表取締役は語る。

 日立製作所は、AIが従業員に能率の上がる働き方を助言する実験を始めた。営業部門の600人に名札型の端末を身につけてもらい、集めた行動データを分析する。幸福だと感じると仕事がはかどるという研究に基づき、AIが同僚との会話を促すなどして職場に一体感をもたらす。

 創造的な仕事ができるよう、従業員のスキル(技能)向上を支援するのも経営者の役目だ。技術に振り回されるのを防ぐITの素養や、視野を広げるコミュニケーション力を磨くことが大切になる。

 AIもロボットも、組織や業務プロセスの見直しにまで踏みこんでこそ導入効果が高まる。競争力を左右する中核の技術と位置づけ、企業は大胆に取り入れる戦略を練り、実行する必要がある。

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