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改憲より先にやるべきことがある

2016/7/11 6:00
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 第24回の参院通常選挙は10日、投開票の結果、与党の自民・公明両党に、おおさか維新の会・日本のこころを大切にする党の改憲2党と無所属議員も加えた「改憲勢力」が憲法改正を発議できる3分の2に達した。

 2014年12月の衆院選で与党はすでに3分の2を超える議席を確保しており、改憲問題が具体的な政治日程に上る可能性が出てきた。1946年11月の日本国憲法公布から70年。戦後政治は大きな転機にさしかかってきた。

「改憲の罠」「護憲の罠」

 今回から選挙権年齢が18歳に引き下げられ、約240万人の新たな有権者が誕生、選挙キャンペーンも展開されたものの、投票率は前回13年の52.61%(選挙区)をやや上回る程度にとどまった。過去4番目に低い水準で、投票率アップには与野党を問わず、さらなる努力が必要である。

 与党の勝因としては対立争点を設定しない戦術に出たことがあげられる。13年の参院選、14年の衆院選と同じように、アベノミクスの是非を問い、消費増税の再延期を打ち出して有権者に負担を強いるテーマをさけた。

 憲法改正についても、自民党は明確なかたちで選挙公約に盛り込まず、公明党も公約で言及することさえしなかった。

 しかしこのやり方は今後、ブーメランとなって改憲側に跳ね返ってくるおそれがある。野党は選挙中から「改憲隠し」と批判しており、国会の憲法審査会での論議などにすんなり入れない事態が予想されるためだ。

 国政選挙では触れないでいながら、国会の憲法審査会でいきなり具体的な発議項目を詰めていくような展開は、やはり民主的な手続きのうえからも問題と言わざるを得ない。

 改憲を前面にかかげなかったことで改憲ラインに達したが、それによってむしろ改憲に踏み切りにくい環境を自ら醸成してしまう「改憲の罠(わな)」に、はまるおそれがある。

 今回も伸び悩んだ民進党は、なお有権者の支持が戻っておらず、党再建の道のりが険しいことが明らかになった。とくに共産党と連携、他の野党も加えた野党統一候補を1人区で擁立するなど、民進党が左へ振れた印象を与えた点も影響したとみられる。

 リベラル票をまとめる効果はあったとしても、保守的な議員も抱えた民進党に親和的だった中道保守の票が民進党に行きにくくなったからだ。

 結果として自民党などに流れたり、棄権に回った票もかなりあったとみられる。その意味で、民共連携は与党を利する一面があったといえる。

 それが改憲勢力に3分の2を許し、改憲の環境整備をしてしまったとすれば、民進党もまた「護憲の罠」に、はまったとみることができる。

 選挙戦で、改憲勢力による3分の2確保の阻止をかかげて戦うなど、まるで一昔前の社会党のようだった。

 改憲がいよいよ政治テーマとして浮上してくるにあたり、留意すべき点がある。そもそも自民党は改憲が党是で、草案までまとめているが、2次草案は野党当時のものとはいえ、保守色が濃すぎてとても多くがのめる代物ではない。見直しの党内論議を求めたい。

最優先の政治課題は

 3分の2の議決で発議しても国民投票で過半数を確保しないと改憲までは行きつかないわけで、野党との議論を丁寧に尽くすべきだ。与野党合意を形成するための努力を重ねる必要がある。

 英国での国民投票をみても分かるとおり、改憲をめぐって国論を二分し、社会の分断を招くような事態は避けなければならない。

 大災害への備えとしての緊急事態条項や、今回の参院選で地元の反発が相次いでいる選挙区の合区を回避するための改正など、ただちに議論の対象となるテーマがあるのは間違いない。

 改憲の議論を進めていくのが必要なのはもちろんだが、改憲を最優先の政治課題として取り組むかどうかには疑問がある。

 安倍晋三首相自身が認めているようにアベノミクスは「道半ば」である。ここはまず経済再生に政権の力を集中し改憲は議論段階として取り組んでいくのが適当だ。

 小泉前政権での選挙勝利を背景にあれもやろう、これもやろうと「政権の罠」に、はまって失敗したのが第1次政権だった。政治のリアリズムが分かり、政治家として成長した首相のことだから、まさか同じ轍(てつ)は踏むまい。

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