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米新興企業は今「落ちてくるナイフ」 最悪の結果も
ジョアナ・ドレイク・アール(コア・ベンチャーズ・グループ ジェネラルパートナー)

2016/6/3 6:30
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 我々はシリコンバレーを拠点とするベンチャー投資会社だ。我々はシリコンバレーのスタートアップ企業の資金調達環境(キャピタルマーケット)が悪化すると懸念している。

Current TVなどのメディア関連企業のエグゼクティブやDeNA Westの最高執行責任者を経て、コア・ベンチャーズ・グループのジェネラルパートナーに就く。スタンフォード大学修士、カリフォルニア大学バークレー校卒。

Current TVなどのメディア関連企業のエグゼクティブやDeNA Westの最高執行責任者を経て、コア・ベンチャーズ・グループのジェネラルパートナーに就く。スタンフォード大学修士、カリフォルニア大学バークレー校卒。

 テクノロジーを過大に評価する「テクノロジーバブル」がピークアウトし、スタートアップ企業の評価額もピーク時より50~70%下落している。技術者はストックオプションではなく、給与を選ぶようになり、サンフランシスコの不動産価格も8年ぶりに下がった。そして皮肉なことにこのタイミングでシリコンバレーで日本企業の投資が復活しているのだ。

 テクノロジー系のスタートアップ企業のキャピタルマーケットの悪化はおおむね次の4つの段階を踏む。(1)潜在した兆候と否定(2)落ちてくるナイフ(3)屈服と市場の底(4)再生――だ。

 マーケットの悪化は2015年初めに始まった。「潜在した兆候と否定」の段階だ。だが、この段階では、具体的なデータはほとんど存在しないため、マーケットが変化したという事実を企業が理解するのは難しい。

 大概、最初に変調に気づくのはアクティブなプロのベンチャー投資家である。資金調達が完了するまでの期間が思っていたよりも長くなり、そして期待外れの結果となるのを悟る。次に気づくのは、さほどアクティブでない投資家である。少ないながらも彼らのデータにも同じトレンドが表れてくるからだ。

 最後にこの変化に気づくのは、起業家とシリコンバレーの外にいる投資家である。起業家は自分たちの会社の日々の仕事で手いっぱいなうえ、年に1回程度しか資金調達をしない。起業家のマーケットへの感覚は、急激に変動する状況からはどうしてもずれやすくなる。

 シリコンバレーのエコシステム(経済環境)の外からやってきた投資家もマーケットに関する情報源と経験に限りがある。そのため、マーケットの変化に気づきにくい。だが、信頼できる情報を得れば、魅力ある資金調達はあり得ないことを理解する。15年夏にはこの段階、すなわち「落ちてくるナイフ」に入ったとみられる。この状況で未公開企業の資金が枯渇しないようにするには、これまでとは別の投資家と「創造的な」資金調達の仕組みの2つが必要だ。

 これまでとは別の投資家とは、一般的にはシリコンバレーの外、つまり米国以外の投資家である。15年第4四半期には異例の資金調達事案が目を引いた。海外投資家がスタートアップ企業に巨額な投資をしているのに、シリコンバレーの既存投資家からの投資はまったくないか、あったとしても少額という事案だ。

 なぜ「落ちてくるナイフ」といわれるのか。ナイフはスタートアップ企業を指す。経営が悪化して企業価値が急速に低下している様子を落ちてくるナイフに例えている。

 こうしたスタートアップ企業に投資するのはリスクが高い。落ちてくるナイフを取ろうとしたとき、うまくナイフの柄をつかむことができれば問題ない。だが、計算を誤ると刃を握ってしまうという最悪の結果となる。そして多くの場合、刃を握るのだ。

 どのようにすれば投資家は「落ちてくるナイフ」を避けられるのか。第3段階の「屈服と市場の底」を経て最終段階の「再生」に至るのはいつごろになるのか。これらの問いへの答えは次回に申し上げたい。

[日経産業新聞2016年5月31日付]


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