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米西海岸で一大勢力 新VC「スーパー・エンジェル」
校條 浩(米ネットサービス・ベンチャーズ マネージングパートナー)

2016/5/24付
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 ベンチャー企業との協業を通じてオープンイノベーションを試みる大企業の動きが活発になってきた。そのような状況で、米国のベンチャーキャピタル(VC)に出資したい、という日本企業が増えている。成果を出すには、米国のVC状況をよく理解することが大事だ。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、日米のベンチャー企業に投資するVCを組成。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、日米のベンチャー企業に投資するVCを組成。

 まず、VCにはいろいろな種類があることを認識しよう。ベンチャー企業の成長過程の各段階でプレーヤーとなるVCは変わる。

 創業のための準備をするアクセラレーターやインキュベーターに付随するVCは、投資額が数千万円以下と小さく、ファンドの規模も小ぶりだ。ベンチャー企業が急成長する時の多額の資金需要に応える「レーターステージ」のVCは、投資額も数十億円以上と大きく、ファンドも一千億円規模になるなど、桁違いに大きい。

 前者は新興のVCであり「マイクロファンド」とも言われる。後者はシリコンバレーの発展と共に成長してきた老舗VCで、セコイア・キャピタルやクライナー・パーキンス(KPCB)などがある。セコイア・キャピタルが育てた会社はエレクトロニック・アーツやヤフー、アップル、グーグルなどきら星のごとくだ。

 このVC界に大きな異変が起こりつつある。VCの「群雄割拠」である。上記の状況だと、ベンチャー企業が製品を開発したり、製品を市場に投入したりする段階である「シードラウンド」や「Aラウンド(初めての本格増資)」に投資するVCがほとんどない。マイクロファンドには本格資金調達段階で出資をする体力はない。伝統的なVCは小さな規模の投資ではファンドを使い切れない。ということで、シードラウンドやAラウンドが抜けてしまった。

 そこで登場したのが「スーパー・エンジェル・ファンド」と言われる新しいファンドである。2010年くらいから自然発生的に始まった。大手VCがソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やゲームなどの新市場を理解できずに投資にちゅうちょしているうちに、小額の投資を次々に行った小さなファンドが大きな投資リターンを得て、新たなVCがたくさんできた。

 その後、スーパー・エンジェル・ファンドは増え続け、今では300社以上が活発に投資している。これらが新世代の有力VCとしてベンチャー界の趨勢を握るような勢力となった。一説によると、シリコンバレーのシード投資案件の7割はこれらのスーパー・エンジェル・ファンドが牛耳っているともいわれている。

 最近ではこれらの新世代の有力VCからさらにスピンアウトして自分の「ミニチュアファンド」を作る動きが出てきている。これらのファンドはかなり専門性を絞り、いい起業家を育て、大手のVCが投資できるくらいの段階まで成長させるのがビジネスモデルである。

 フィンテック(金融イノベーション分野)では、金融機関出身で規制に詳しく、業界の内側まで人脈のあるエグゼクティブが小規模のファンドを立ち上げるような例が増えている。

 シリコンバレーを中心とした先進ベンチャー企業の動向を把握するには、何百社という新興VCコミュニティーとの交流が必要となってきている。日本企業はシリコンバレーの内部コミュニティーに入ることがすこぶる苦手だ。現状では限定的で偏った情報しか入って来ない。さらに多くのVCと付き合う仕組みを考え、シリコンバレーの最先端VCとのネットワークを開拓することに挑戦して欲しい。

[日経産業新聞2016年5月24日付]

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