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憲法と現実のずれ埋める「改正」を

2016/5/3 3:30
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 きょうは69回目の憲法記念日である。今年11月には現憲法が公布されて70年を迎える。

 日常生活のさまざまな場面で憲法が話題になることが増えてきた。昨年は安保法が合憲か違憲かで国論を二分する論争が起きた。最高裁は女性の再婚に関する民法の規定を違憲と判断した。

 そのわりに「憲法」と聞くと、いまだに身構える人が多い。戦後長く護憲派と改憲派が一般大衆と無縁の観念論争をしてきた弊害だ。もっと身近なところから憲法を眺め直してはどうだろうか。

大規模災害に備えよ

 国会が制定した法律を最高裁が違憲と判断したのはこれまで10例ある。半数の5例は21世紀になってなされた。現憲法と現実のずれが年々大きくなってきていることのあらわれといえまいか。

 例えば、最高裁は2005年、在外邦人が国政選挙に参加できない状態を憲法15条などに反すると指摘した。70年前、日本人がかくもたくさん海外に住むと想定できたはずがなく、在外投票制度がなかったのは無理はない。

 この判決は現憲法より後からできた公職選挙法の是正を求めたものだが、要するに憲法に規定がない問題について、その精神を読み取る作業をしたわけだ。こうした憲法の空白の穴埋め作業も、広い意味での「憲法改正」と呼んでもよいかもしれない。

 憲法を読み直し、不都合があれば立ち止まってみる。さまざまな選択肢があるはずだ。新たな法律をつくれば対応できるのか。憲法解釈を変更するのか。憲法本文をいじる場合でも書き足せばすむのか、書き直すのか。必要に応じて淡々と作業していけばよい。

 現憲法は米軍の占領下でつくられた。そこにGHQ(連合国軍総司令部)の意志が反映されていたことはいろいろな証言がある。他方、GHQ案が多くの国民に歓迎されたことも事実である。生存権を定めた25条のように日本側が書き足した条文もある。

 そうした経緯を考慮すれば「押し付け憲法だから、全てを捨て去る」という結論にはならないはずだ。改憲の実現という外形にこだわり、国民が反対しそうもない課題で実績をつくろうとする「お試し改憲」は好ましくない。

 いま憲法に足りないのは何だろうか。日本は自然災害の多い国だ。東日本大震災などの際、備えが足りなかったのは、防災インフラだけではない。交通規制その他をみても法制度の不備がもたらした混乱は数え切れなかった。

 日ごろから法律づくりに努めても、常に「想定外」はある。緊急事態の際、内閣が法律に準じる効力も持つ命令を発することができるようにする仕組みをつくっておくことは検討に値する。

 一定期間内に国会が事後承認しない場合は失効すると定めれば、三権の均衡は保たれる。

 ただ、自民党が12年にまとめた改憲草案の緊急事態条項は問題がある。緊急事態を(1)外部からの武力攻撃(2)内乱等による社会秩序の混乱(3)地震等による大規模な自然災害その他――と定めるが、範囲が広すぎる。

 自衛隊の治安出動すら実例がないのに「社会秩序の混乱」に超法規的権限が必要なのか。民進党は緊急事態条項の新設をナチスの全権委任法になぞらえ、反対している。自民党は無用な誤解を招かないように「緊急事態は自然災害に限る」と明言すべきである。

9条論争は卒業したい

 自然災害で国政選挙の実施が困難になった場合の対応も、あらかじめ定めた方がよい。ほとんどの国会議員が任期切れになり、国政のかじ取り役がいなくなった、では困ってしまう。

 このほか、プライバシー権や環境権など新しい権利の明記、衆参の役割分担の明確化を含む統治制度の見直し、地方自治制度の改革など課題はたくさんある。

 過疎地の声を国政に届かせるため、参院は都道府県の代表を選ぶ仕組みにしてはどうかとの意見がある。1票の格差に例外をつくるのであれば、憲法本文にその旨を明記するのが筋である。

 戦後の憲法論争は主に「戦争放棄」をうたう9条を軸になされてきた。今後も論点から外れることはあるまい。

 ただ、憲法解釈を見直して集団的自衛権の行使を限定解除したことで、現在の国際情勢に即した安保体制はそれなりにできた。9条を抜本的に書き直す必要性はかなり薄らいだ。あとは自衛隊をどう法的に位置付けるかだけだ。9条にばかりこだわる不毛な憲法論争からはそろそろ卒業したい。

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