デモクラシーの生と死(上・下) ジョン・キーン著 世界規模での実践の歴史を詳述

2014/1/28付
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 民主政の評判は地に墜(お)ちたかのようだ。非効率で大衆迎合的、何も決められない仕組みだということが先進国での経済危機もあって明らかになったからだ。著者はしかし、そのような政治様式であるからこそ世界規模で広がったのだという。場当たり的で首尾一貫性のない、つまりしたたかな政治体制であるからこそ、ここまで普遍的になったわけだ。民主政は道程に過ぎず、永遠に不完全だからこそ活(い)き活きとする。これが「リアル」な民主政の姿だという。

(森本醇訳、みすず書房・各6500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
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(森本醇訳、みすず書房・各6500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 キーンは古代アテネのほか、小アジアやイタリアの都市国家、イスラム世界で実践された「集会デモクラシー」、中世から近代にかけて欧米、南米で発展した「代表デモクラシー」をヴィヴィッドかつ博学卓識に跡付ける。モスクも民主政の母胎であったのだ。

 その中でも著者は現代政治における「モニタリング・デモクラシー」の出現を重視する。それは、権力者に対するチェックや異議申し立てが常態化した、第三の民主政の形である。この民主政を日々作り出すのは市民活動、メディア、非政府組織(NGO)、国際組織、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)など星の数ほどある主体だ。三権分立といったチェック・アンド・バランスは過去のもの、今では社会のあらゆる不正があらゆるネットワークからチェックされている。是非は別として、賑(にぎ)やかで喧噪(けんそう)に満ち、いがみ合いが続くのがモニタリング・デモクラシーの特徴である。

 本書の秀逸さは、民主政が「何か」という本質的問いを迂回した上で、西欧諸国に偏っていた解説から離れ、古代シリアや現代インドやベネズエラといった、空間と時間を超えた「実践」を綴(つづ)っていることにある。著者が言うように、民主政は理屈で擁護されるものではなく、そこにあるものなのだ。

 私たちは民主政から逃れることはできない。民主政を批判することすら民主的行為(言論の自由!)の一つだからだ。是々非々ではなく、事実を淡々と述べる分厚いこの本を読者が読み通した時、民主政は嘲笑の対象どころか、畏怖される存在と化すだろう。

(北海道大学准教授 吉田徹)

[日本経済新聞朝刊2014年1月26日付]

デモクラシーの生と死 (上)

著者:ジョン・キーン
出版:みすず書房
価格:6,825円(税込み)

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