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言語都市 チャイナ・ミエヴィル著 辺境の星の言語をめぐるSF

2013/4/23付
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 1972年生まれのチャイナ・ミエヴィルは、英国SFを代表する俊英。現役のSF作家としては、たぶん世界でも五本の指に入るだろう。ファンタジーやホラーの分野でも高く評価され、警察ミステリと幻想小説を融合させた型破りな長編『都市と都市』(2009年)では、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞などに輝いた。そのミエヴィルが2011年に発表した『言語都市』は、著者の全長編の中で、いちばんSF度の高い作品。

(内田昌之訳、早川書房・2000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
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(内田昌之訳、早川書房・2000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 時は、地球人類が銀河にあまねく広がった遥(はる)かな未来。辺境の惑星アリエカに人類が建設した特別居留地、エンバシータウン(大使館町)が主な舞台となる。

 “ホスト”と呼ばれる原住種族は、巨大な昆虫みたいな外見で、2種類の発声器官を持ち、その両方を同時に使ってしゃべる。彼らの言語は現実の事物と一対一で対応するため、実在しないものについては語れず、嘘もつけない。

 彼らとコミュニケーションをはかるべく、人類側はクローン技術によって瓜(うり)二つのペアを生み出し、各組が統合されたひとつの精神を持つように特訓、“大使”としてホストとの交渉に当たらせている。

 だがある日、新たな方法で訓練された新任の大使ペアが赴任し、同時に口を開いたとたん、ホストの間に驚くべき反応が起きた……。

 というわけで、異星言語を核にした文化摩擦が小説の中心テーマ。言語が文明に壊滅的な被害をもたらす道具になりうるという発想は、伊藤計劃(けいかく)の『虐殺器官』にも通じるが、ミエヴィルならではの奇想は本書でも健在。たとえば、アリエカ生まれのヒロインは、子供の頃、ホストから、“あたえられたものを食べた少女”という“直喩”にされた経験を持つ――などなどの突拍子もないエピソード群が楽しい。

 S・R・ディレイニー『バベル―17』やテッド・チャンの短編「あなたの人生の物語」など、数々の名作を生んできた異星言語SFに、また新たな傑作が加わった。著者十八番のエキゾチックな異星文明描写もお見逃しなく。

(翻訳家 大森望)

[日本経済新聞朝刊2013年4月21日付]

言語都市 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)

著者:チャイナ・ミエヴィル
出版:早川書房
価格:2,100円(税込み)


※価格情報は掲載時のものです。

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