春秋

2012/2/22付
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 世界のニナガワこと、演出家の蜷川幸雄さんが書いている。「千人の観客がいれば千の動機があり、千の人生があるのです」。だから、自分は千のナイフを持つ舞台をつくらなければならないと。随筆集「千のナイフ、千の目」にある。

▼千の心に、各様に突き刺さる舞台を。あくなき挑戦を続ける活力なのだろう。いや、蜷川さんに限らず「千のナイフ」は演劇界の多くの人が共有する思いでは。豪華な蜷川作品と対極のような簡素な舞台。劇団四季の出身者らが先日、都内で公演した音楽朗読劇「モリー先生との火曜日」もそんな感じを抱かせた。

▼原作は、米コラムニストのミッチ・アルボムの実話小説だ。16年ぶりに再会した恩師のモリー先生はALS、筋萎縮性側索硬化症という難病を患っていた。刻々と近づく死。だが先生は毎週火曜日、人生をめぐるミッチとの最終講義を楽しむように続ける。「いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べる」と。

▼生と死。生きる意味。役者のかみしめるような朗読が観客に迫る。難病の肉親を抱える家族。東日本大震災で尊い命を奪われた人。人生の価値を忘れている人……。「国会」劇場の不毛な論戦を聞いているより、よっぽど「千のナイフ」が心を突いてくる。時には、演劇に足を運んでみるのも悪くはない。

(12・2・22)

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