がん先進医療、陽子線治療は250万円 どうする家計負担
編集委員 田村正之

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2011/2/21 7:00
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 家計に大きな影響を与えるのが病気など「万一」の出費。なかでも「がん」治療では費用が高額になるものも多い。その代表例が「陽子線治療」と呼ばれる治療法。2月1日現在、全国に5施設あり、一連の治療で費用は250万~300万円だ。筑波大学陽子線医学利用研究センター(茨城県つくば市)を見学し、先進医療についてを考えた。

写真1 陽子線治療のベッド
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写真1 陽子線治療のベッド

 「陽子線治療は放射線治療の一部。水素の原子核である陽子を加速してがん細胞に照射し、がんの増殖のDNAを断ち切ります。肝臓がんなどでは、外科手術に比べて体に負担が圧倒的に少ないにも関わらず、5年生存率では54%と、外科手術と同等の結果を残せています」(筑波大の栄武二教授)

 がんの放射線治療で一般的なX線は体に入った直後に威力が大きくなり、その後もずっと威力を保つ。このため、がん細胞の前後の正常な細胞にも影響を与えがち。「一方、陽子線は体に入った段階では威力が小さいため、がん細胞の手前を傷つけにくく、狙った場所で威力が急に大きくなってそこで完全に止まるので、がん細胞の後ろの正常細胞も傷つけなくてすみます」

 ただ陽子を加速させる大きな施設が必要になり、筑波の施設も、装置だけで37億円、建物を合わせると71億円かかった。運転費も巨額で電気代など年間2億円以上だ。治療費が筑波の場合で約250万円と高額になるのもこのためだ。

写真2 ベッドの裏側には巨大な「ガントリー」が
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写真2 ベッドの裏側には巨大な「ガントリー」が

 写真は実際の陽子線施設。治療を受けるベッドの周辺(写真1)は、ときどき目にするCTスキャンのようで、それほど珍しい感じはしない。患者がリラックスできるよう、背後の壁にはきれいな風景画が描かれ、英国のロックグループの曲が静かに流れていた。

 しかしこの裏側がすごい。写真2は壁のすぐ裏側にある、回転式の「ガントリー」と呼ばれる装置。巨大ロボットを思わせる直径10メートルものこの設備の中で、光速の約6割に加速された陽子が病巣の大きさに合わせてミリ単位で調整される。

 回転できるようになっているのは、患者の体の様々な角度からの照射を可能にするためだ。

 「スイッチ押してみますね」と施設を案内してくれた技師の石田真也さん。ウイーンという音とともに、加速器が回転し、頭上に迫ってきた。もちろん十分な距離はあるのだが、押しつぶされるような迫力に思わず後ずさる。

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